高丘親王航海記 (文春文庫)価格: 470円レビュー評価: 5.0 レビュー数:9 夢と現実のあわいを行き来しているうちに、一体どちらが夢でどちらが現実なのか分からなくなってくる、そうした味わいにするすると引き込まれてゆく連作短篇集。そこには、モーツァルトの20番以降の「ピアノ協奏曲」を彷彿させる調べがあり、自由の境地に遊ぶ清澄な美しさに魅了されました。
六十七歳というのに童子のように天真爛漫な御子(みこ)こと高丘親王が、数人の従者とともに天竺へと向かう道中の、不可思議な話を記したファンタジー。「そうれ、天竺まで飛んでゆけ。」の言葉をモチーフにして、夢のエッセンスのような幻想譚が展開されていくのですね。久しぶりに再読したのですが、これはやっぱり素敵な幻想綺譚 ...さらに詳しい情報はコチラ |
夕べの雲 (講談社文芸文庫)価格: 1,155円レビュー評価: 4.5 レビュー数:4 平凡な日常の中にも二度とは戻ることの出来ない瞬間の「今」があることを教えてくれる。それはタイトルが示すように、一瞬々々で流れ動き、色合いをも変じさせていく「夕べの雲」のようであり、決して手に掴むことのできない美しいものである。
本書は1960年代の日本の家庭を淡々と描いている。緑に囲まれた丘の上に住んでいたその家族は皆ほのぼのとしており、生活にゆとりを持っているようだ。やんちゃな子供たちの遊びは木登りを始め、カブトムシ捕りやぎんなん拾いなど、多くが自然の中でのものであり、その一昔前の遊びを前に懐かしさと微笑ましさを感じないではいられない。また、次第に都市化され自然が ...さらに詳しい情報はコチラ |
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懐中時計 (講談社文芸文庫)価格: 1,103円レビュー評価: 5.0 レビュー数:1 ここまで肩の力の抜けた、いい意味でリラックスした文章、というものに初めて出会った。美しい文章を書くということで、何かの本に紹介されていたので、今回読んでみた。大寺さんを主人公にした作品には、特にそれを感じる。庶民的で、ちょっと生活臭がして、それでいて「死」を扱った作品も多く、死を日常で捉え、日常の中の一こまとして描かれている。それが、逆に強く印象に残って、記憶に残るいい作品群になっている。もっと早く出会いたかった作家である。 ...さらに詳しい情報はコチラ |
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江戸文学掌記 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)価格: 1,260円レビュー評価: 5.0 レビュー数:1 夷斎石川淳先生。戦乱の世にあって、浮世の塵芥のその身に降りかかること、これを蛇蝎の如く厭うて江戸文章の世界に遊ぶ。その才学の発するところは和文の世界に止まらず、漢洋の教養をも修める。 本書は碩学夷斎石川淳先生の江戸留学の折、読者に渡し忘れた手土産といった風情で、連ねられた文字のいざなうところは、まさしく鑑賞の極楽である。 江戸の文人を紹介するといっても、先生の筆は決して賞賛のみに傾かず、時に苛烈を極める。いっさいの妥協を許さぬといった気配だ。 人はどう思うか知らないが、私は本書を紐解くたびに、襟を正したい気持ちになる。 ...さらに詳しい情報はコチラ |
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木に会う (新潮文庫)価格: 407円レビュー評価: 3.0 レビュー数:1 1989年に出た単行本の文庫化。
国内の木々を訪ね、森を歩きまわった11篇が収められている。
屋久島の縄文杉、伊豆の楠、白山のブナの森、淀川上流部のはげ山と、いろいろな場所をめぐっていく。そこで語られるのは、日本の森の荒廃、自然保護運動の迷走ぶり、木々の持つ魔力などである。
さらには、日本文化を支えて来た木、船材としての木、貯木場、建材としての木といった側面にも踏み込んでいく。
ただ、私にはあまり魅力的な本とは思えなかった。焦点がぼやけているし、著者の木への愛がよく理解できない。充分に消化されないまま書かれた本という印象を受けた。 ...さらに詳しい情報はコチラ |